更新日 2025-09-03
身近にあるプラスチック添加剤ってなに?
身近すぎる「プラスチック添加剤」の話
――毎日の暮らしと上手に付き合うコツ
イントロ:プラ自体より“中身”が気になる理由
プラスチックって、実は“樹脂だけ”で使われることはほとんどありません。
柔らかくしたり、色を付けたり、燃えにくくしたり――**性能を底上げするための化学物質「添加剤」**がいろいろ混ざっています。便利さの源泉なんですが、**使っているうちに食べ物・空気・ホコリへ少しずつ移る(溶け出す/揮発する)**ことがあって、それが健康や環境の話につながってきます。
ざっくり「用途 → 例 → どこにある?」で。
可塑剤(柔らかくする)
例:フタル酸エステル(DEHP など)、代替系(DINCH/DOTPなど)
場所:ビニール床・壁紙・電線被覆・玩具・一部の医療器具・食品包装
難燃剤(燃えにくく)
例:臭素系(PBDE/HBCD)、リン系(OPFR)、無機系
場所:家電の筐体、断熱材、車内、電子機器まわり
安定剤・UV吸収剤(劣化防止)
例:HALS、ベンゾトリアゾール系、BHT/ホスファイト系
場所:屋外用品、車両部材、フィルム類、日用品全般
ビスフェノール類(硬さ・透明性)
例:BPA(代替にBPS/BPF)
場所:ポリカ容器、缶の内面塗装、感熱紙レシート
PFAS(はっ水・はつ油、加工助剤)
特徴:とても分解されにくい“永遠の化学物質”と呼ばれるグループ
場所:一部の包装、撥水加工、製造時の助剤 など
ポイント:同じ製品に複数の添加剤が入っているのが普通。だから「混ざった影響(ミックス効果)」まで含めると、評価が難しいんです。
食べ物経由(経口):包装・容器からの移行、加熱で移りやすくなるケース。
空気経由(吸入):室内のホコリ(ハウスダスト)に付いた微量成分や、新品の家具・家電からの揮発/半揮発。
肌経由(経皮):長時間触るケース(手袋、スマホケース、衣類)など。
赤ちゃん・子ども:口に入れがち&体が小さいので影響を受けやすい。
体への影響(候補):内分泌かく乱(ホルモンのまね/ブロック)、生殖・発達、神経・代謝、アレルギー/免疫などが研究テーマ。
環境への影響:海や土壌で添加剤が溶け出す、マイクロプラスチックが他の汚染物質を運ぶ、食物網を通じた拡散…など。
大事なのは「恐れすぎないで、高リスクの場面から賢く減らす」こと。
1.電子レンジ加熱はガラス/陶器で。プラ包装のままチンは極力回避。
2.油っぽい料理はプラ長期保存を避ける(油に添加剤は移りやすい)。
3.古いポリカ容器は世代交代(ヒビや白濁はサイン)。
4.こまめな換気+HEPA掃除機で室内ダストを減らす。
5.新品の家具・家電は開封?数日は換気多め(初期放散対策)。
6.**PVC(リサイクル番号??3)は目的次第でPE(??2)/PP(??5)**に置き換え検討。
7.“BPAフリー”=完全安心ではない(BPS/BPFなど代替にも目配り)。
8.香り強め・抗菌加工は必要性で選ぶ(皮膚感作・室内空気への影響に配慮)。
9.レシート(感熱紙)に触れすぎない。むやみに持ち歩かない。
10.手洗いが最強。ダスト→手→口のルートを断つ。
キッチン
加熱は耐熱ガラスor陶器。
食品保存は短期はOK/長期はガラス・金属に分担。
食洗機OK表記・耐熱温度をチェック。
室内
週1のウェット清掃+換気。
床・壁を新調したらしばらく換気強化。
空気清浄機はHEPA+可能なら活性炭。
子ども/ベビー
月齢・素材表示を確認。
舐めやすいおもちゃはシンプル素材を優先。
プレイマット等は換気&拭き掃除で初期臭対策。
買い物
**素材表示(リサイクル番号)**をチェック。
「フリー表示」は何で代替しているかも確認。
過剰包装は避ける=移行チャンスも減る。
日本:食品容器のポジティブリスト制度(OKな物質だけ使える方式)がスタート済み。
EU/米国:REACH、RoHS、POPs、州法(カリフォルニアProp65)など、規制は年々アップデート。
企業側も代替評価や情報開示が進行中。私たちは信頼できる表示・第三者認証を手がかりに選べます。
Q. BPAフリーならもう安心?
A. 代替のBPS/BPFが使われることも。高温/油/長期接触を避ける工夫は続けましょう。
Q. リサイクル樹脂って危ない?
A. 用途と品質管理次第。食品接触は厳格管理、非食品なら活用の余地大。信頼できるルートかを確認。
Q. 空気清浄機で化学物質も消せる?
A. HEPAは粒子、活性炭は一部のガスに有効。換気と併用がコツ。
プラスチック添加剤は、便利さとトレードオフの関係。
高リスクの場面(加熱・長期接触・乳幼児用途・室内ダスト)を優先して賢く減らす――これだけでも日々の曝露はグッと下げられます。
そして、企業・行政・私たち生活者が透明性と予防的な選択で歩み寄れば、便利と安全のいいとこ取りは十分可能です。
◆ 電子レンジはガラス/陶器
◆ 油×長期保存は避ける
◆ 古いポリカ容器は交換
◆ 換気+HEPA掃除でダスト対策
◆ 新品家具・家電は初期換気
◆ PVC多用は用途次第でPP/PEへ
◆“フリー表示”の代替物質にも注意
◆ 香り強め/抗菌は必要性で選ぶ
◆ レシートは最小限に扱う
◆ 手洗いをルーティン化